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「甦る相米慎二『台風クラブ』上映&細田守×奥寺佐渡子トークショー」

1月21日(月)ユーロスペース 司会:藤井仁子

細田:呼んでいただけて光栄ですし、相米さんに触れる観客がこれだけ多いことにも感動しています。
――初日から若い方が大変多いんですよ。はじめにご覧になった作品はなんですか?
細田:『翔んだカップル』です。同時上映の『まことちゃん』を観に行ったんですよ、アニメ好きですから。衝撃を受けて帰って来ました。
――実写もたくさんご覧になってましたか?
細田:ぼくは1967年生まれなんですけど、リアルタイムで観た80年代の日本映画に愛着がありますね。映画はこういうものだと刷り込まれました。森田芳光さんとか大林宣彦さんとか。ギリギリ市川準さんもかな。ヒーローのような憧れの存在でした。

細田:昨日『台風クラブ』を観返してきたんですが、この作品の影響からから逃れられないというか(笑) 当時どんな風に受け止めたかまで、まざまざと思い出しましたね。
――『時をかける少女』で、奥寺さんと組まれた時、『お引っ越し』のことは意識されましたか?
細田:もちろんもちろん。他にも、平山秀幸さんとのお仕事とか。日本映画ファンですからね。特に『お引っ越し』がデビュー作というのがね。映画の神に選ばれた人がいるんだって。僕はアニメをやっていて、相米監督のような現場の雰囲気を知ることはできないわけですが、奥寺さんを通してね。打ち合わせをしていても「相米さんは、どうされてたんだろう?」なんて思いめぐらせてましたね。
奥寺:最近、知ったんですよ(笑)

――奥寺さんは『時をかける少女』が初めてのアニメですが。お話がきたときはいかがでした?
奥寺:初めてのことをやりたいと思っているので。細田さんの作品は観たことがなかったんですが、『おジャ魔女どれみ』のビデオを観て、この監督はスゴい、絶対やらなくちゃって。
細田:ありがとうございます。俳優さんだと、斉藤由貴さんだったら『雪の断章』だし、工藤夕貴さんなら『台風クラブ』って、自分で勝手に形容しちゃうように、奥寺さんもお会いする前から、あの『お引っ越し』の! って崇めてたんですよ。
奥寺:(笑)
――アニメのお仕事で勝手が違ったことはありましたか?
奥寺:あまりなかったですね。
――細田さんの映画は、アニメが苦手という人にもファンが多い。
細田:僕の日本映画ファンなところが画面からにじみ出しているのかな? よくわからないですが。
――アニメを作っている方からして、相米さんのカメラワークなどはどう思われますか?
細田:うーん。真似したくもできないですしね。でも、『雪の断章』の冒頭って、けっこうアニメチックというか、庭のまわりで長い時代を表現するじゃないですか。

――時間も空間も飛び越えて。
細田:アニメ的というとなんですけど、自分たちがアニメの現場で考えていることと原理的に近いという気がするんです。ああいう、時間の圧縮というかデフォルメの仕方が。
――普通の発想じゃないですね。
細田:『台風クラブ』にも長回しが多いですが、役者さんの高まりとか、その場の雰囲気みたいなものは、アニメが逆立ちしたってできないですからね。

――相米さんが描く少女と、細田さんの少女については、いかがでしょう。
細田:子供を主人公にした映画が多いですよね。日本映画の監督には少ないんじゃないか。アニメの場合、子供が主人公というのはスタンダードなんですが。実写で子供を扱うというのは、興行的にも現場的にも難しいじゃないですか。アニメなら声優さんが上手いので大丈夫ですが。奥寺さんは、何か聞いてませんでしたか。
奥寺:「子供はわからないから主人公にしたい」という事はおっしゃってましたね。自分から遠い存在だからって。
――相米さんも細田さんも男じゃないですか。それで奥寺さんという女性の力を借りて、どういう風に仕事をされているんですか。
細田:男か女かってことではないと思いますね。
奥寺:どういうキャラクターなのかってことは話し合いますが。
細田:大林映画と相米映画の少女ってぜんぜん違うじゃないですか。大林さんの少女は……。
奥寺:夢のような。
細田:相米映画のなかの少女って、特に『台風クラブ』がそうですが、いまにも死にそうじゃない。工藤夕貴さんも、冒頭からえらい格好をしてるし。きわどいシーンが多くて、安心して観ていられない。

細田:相米さんとの『お引っ越し』の脚本作りについて、さわりだけでも。
奥寺:どこが悪いのかぜんぜん言わないんですよ。「つまらないから直して来い」って、二十稿、三十稿と。
細田:俳優さんがテイクを重ねてOKが出ないのと同じですね。溝口健二的な。

――映画はそこに俳優がいるけれど、アニメは描かないといけないじゃないですか。相当キャラクターを練っているんですか。
細田:まあ、二十稿、三十稿ってことはないけど。
奥寺:いろいろなパターンを出してね。
細田:奥寺さんと作っていく中で、そうやって積み上げていく作業が楽しいんですね。
奥寺:こうしてほしいって細田さんは言ってくれて。それがまた面白いんですね。
――相米さんとは違う。
細田:ちょっと真似してみようかな(笑) 僕がやったら怒られそうだけど。合宿とかしたんですか?
奥寺:泊まりこみはなかったけれど、一日中つめて。
細田:球は投げてこなかったんですか? 雑談したり。
奥寺:私、素人だったんで、まわりの人たちがみかねて「これはこういう意味だよ」とか、いろいろ教えてくれました。
――細田さんは、ご自分を独裁者だと思いますか?
細田:ぜんぜん。憧れはありますけどね。キューブリックとか。

――『サマーウォーズ』で富司純子さんが出演していますね。この特集にもゲストで来られるのですが。
細田:僕が初めて富司さんを映画で観たのは『あ、うん』とかになっちゃうんですよ。『緋牡丹博徒』とかは後追いで観たので。80年代の日本映画って、評論家の方によっては「違うね」「スケールダウンしたね」みたいなことを言ったりするじゃないですか。でも、こちらはそこで育っているんだからね。世代的なものはぬぐえないし、作品にも反映しちゃうことが多い。90年代以降は、自分が作り手になったので見方も変わってくるんですけど。
――昨年、ヨーロッパで相米慎二の特集上映をやりまして。やっと高い評価を受けるようになってきました。
細田:それが意外ですね。
――要するに、60~70年代の邦画と、最新の映画の間を埋める存在として、映画史がつながったというような受け止められ方なんです。細田さんがおっしゃられた80年代映画の低評価が海外にも影響していたんですね。

細田:奥寺さんは『台風クラブ』を観たのはいつごろだった?
奥寺:大学に入ってすぐ。ずいぶん映画は観ましたが、忘れられないですね。頭にインプットされちゃって。
細田:今日、会場に入ってきてね。『台風クラブ』を見終わった人たちの顔がね……。スゴい良い顔をしてたんですよ。ちなみに初見のかたはいらっしゃいまいますか? いいですねえ。こんな話を聴いている場合じゃないでしょ(笑)
――脚本家として、『台風クラブ』のシナリオはどうですか?
奥寺:やっぱり面白いですね。台詞がとても生々しいし、演出がそれをふくらませていて、スゴいですよね。
――ディレクターズ・カンパニーの公募から、相米さんが選んだのですが、通常の脚本の描き方からは出てこないんじゃないでしょうか。
奥寺:三浦友和さんのキャラクターが強烈ですね。
細田:強烈だけど、わかるっていうか。嵐の中で電話をして、その後に部屋に戻ってきて座り込んじゃうじゃないですか。なんかこう物哀しい。
奥寺:大学の時に観た時と、大人になってからでは見方が変わりますね。
細田:こんな大人になりたくないなって思ってたけど。自分の半生を振り返るとね、うなだれちゃう気持ちもわかる。視点が多層的になっていく。

細田:奥寺さんは、誰が好き? そんな映画じゃないかもしれないけど(笑)
奥寺:健くんはスゴい強烈ですね。
細田:サイコっぽいと思ったら、「ああ、モテてえなあ」とかいいニュアンスで言ったり。あんな顔の人もなかなかいないですね。“野球部”感がスゴくでている(笑)
奥寺:出てくる子供たちのバランスが良いですね。
細田:メガネをかけてる娘さんがいますけど、僕ちょっとだけ仕事をしたことがあるんですよ。渕崎ゆり子さん。今は声優をやられていて、『少女革命ウテナ』というアニメで、姫宮アンシーっていう、やはりメガネをかけたキャラクターを演じていたんです。「ああ、相米組にいた渕崎さんだ」って現場で思ってました。

――細田さんも『おおかみこどもの雨と雪』がフランスで上映されたりしていますが、海外からの新鮮な反響ってありますか?
細田:相米さんもそうですけど、僕たちの持っている日本映画的文脈とか80年代文脈とかがあって、そういう影響がありすぎて、まっさらな気持ちで観ることってなかなかできなかったりする。そういう時に、海外からの視点で、何か新鮮なものを見つけてくれるかもしれませんね。

――ここで、本特集の追加ゲストの発表です。明後日の『雪の断章』に斉藤由貴さんが来てくださいます。
細田:おおっ。(上着からスマートフォンを取り出す) 23日? ああ~(がっかりして) ご覧になれるかはぜひ。

――最後に、告知があれば。
細田:来月、『おおかみこどもの雨と雪』という作品のBlu-rayとDVDが出ます。これが『台風クラブ』の影響ぬきには語れない映画になっております(笑) 影響とか言うよりも、染みついちゃってるんですよ。自分にとって相米監督というのは。図々しく自分の映画に入れるのはね、わかってるんだけど、押しとどめられない。
奥寺:『草原の椅子』という映画がまもなく公開されます。よろしくお願いします。それと、今『夜行観覧車』というドラマが放送中です。
細田:奥寺さん、たくさん告知するものがあっていいなあ(笑)