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「日本タレント名鑑」の「アイドル声優ブーム」分析がいい加減すぎる

2000年代に入り、急速にアイドル化が進んだ女性声優業界。テレビの登場以降、外画の吹き替えやアニメのアフレコで裏方として業界を支えてきた声優たちであったが、80年代に入るとオタクと呼ばれるコアなアニメファンが登場し、本来は裏方であったはずの声優にも注目が集まるようになる。

注目を集めた声優なんて、野沢那智白石冬美の頃からいくらでもいますよね。いわゆるアニメブーム以降に限っても、「アニメージュ」の創刊号(1978年5月)にはすでに神谷明の特集記事がありますし、80年代とする根拠が不明。オタクという言葉が確立される以前からの話でしょう。

アイドルから声優に転向し、アニメ『タッチ』の浅倉南役で一躍スターとなった日高のり子や、アニメ系イベントでのコスプレで素人時代からアイドル的な人気を博していた川村万梨阿など、アイドルとしての素養を持つ女性声優が台頭する中、アニメ雑誌などにアフレコ現場の写真などが掲載されることも増え、女性声優のルックスも注目されるようになる。

80年代中盤は、アニメブームが一段落して、そこからの派生である声優ブームも停滞気味だったのでは? 

1994年には、女性声優のアイドル化を受けて声優専門誌の『声優グランプリ』と『ボイスアニメージュ』が創刊。それぞれの表紙を、当時人気を二分した椎名へきる國府田マリ子が彩り、演技やトーク、歌だけでなく、雑誌グラビアを中心としたアイドル活動をおこなう、現在のアイドル声優ブームのフォーマットが完成する。
アイドル声優ブームが盛り上がる中、林原めぐみは歌手として、「Give a reason」で声優のソロ曲として史上初のオリコン週間ランキングトップ10(第9位)にランクイン。「集結の園へ」はレコチョクにて声優本人のソロ曲として初となる着うたフル25万ダウンロードと数多くの記録を樹立し、声優ブームが世間一般に認知されるきっかけを作った。

林原めぐみの名前が、椎名へきる國府田マリ子の後に出てくるのは時系列を追って記述しているコラムとしては不適切。また、林原めぐみの「Give a reason」は1996年、「集結の園へ」は2009年の曲。13年もの差を無視しているのも奇妙としか言いようがありません。

90年代中盤に文化放送のラジオ番組で椎名へきるの妹分的な存在として登場したアーツビジョン系の田村ゆかり堀江由衣林原めぐみを歌手としてスターダムへと押し上げたキングレコードが、次なるアーティスト系声優としてプロデュースした水樹奈々など、現在も第一線で活躍するアイドル声優が業界を席巻する中、一方で80年代のアイドルブームと同様に、アイドル声優ブームも「乱立による消費の加速」という負の一面も見え始める。

アーツビジョン系」という表記もよくわからないのですが(ふたりとも当時はアーツビジョン所属なので「系」とか不要)、キングレコード林原めぐみの次にプロデュースしたのが水樹奈々という説明も苦しい。確かに同じレコード会社ではありますが、所属する部署が違うからです。

アニメバラエティ番組の制作をおこなっていた株式会社ラムズは、自社の制作番組に出演していた野川さくらを所属声優として以降、積極的にオーディションを開催し、アイドル声優ユニット「クローバー」のプロデュースや、劇団の設立など、後発ながらアイドル声優ブームを牽引してきたが、業績の悪化により2013年6月に倒産している。

90年代の「乱立による消費の加速」(って具体的に何のことなんですか?)の例として、2013年の倒産を挙げるデタラメさ。それに、ラムズが声優事務所として本格的に活動するのは21世紀に入ってからです。

「消費の加速」による明暗が見え隠れする中、水樹奈々が『魔法少女リリカルなのはA's』の主題歌「ETERNAL BLAZE」でオリコンデイリーランキング2位という快挙を成し遂げ、NHK紅白歌合戦への出場も果たすと、2匹目のドジョウを狙った新規事務所の設立や芸能系プロダクションの声優部門開設などが相次ぎ、アイドル声優ブームは新たな時代を迎えることとなる。

水樹奈々の「2匹目のドジョウ」狙いで、設立された声優事務所ってどこですか? あまりにも短絡すぎる説明じゃありませんかね。それに「ETERNAL BLAZE」のリリースは2005年で、「紅白歌合戦」への初出場は2009年です。ここでもチグハグ。

新規事務所や芸能プロの声優部門開設により、アイドル声優の新機軸として打ち出されたのは、モーニング娘。AKB48をひな形とするアイドル声優ユニットである。

むしろ初期のAKB48は、同じキングレコードの「魔法先生ネギま!」に代表されるアイドル声優の戦略をお手本にしていました(秋葉原を拠点としたのも、その一例) 

ソニー・ミュージックエンタテインメント傘下の新規事務所ミュージックレインが2005年から2006年にかけて行った「スーパー声優オーディション」では、高垣彩陽豊崎愛生戸松遥寿美菜子の4人が声優アイドルユニット「スフィア」としてデビューし、それまでアーツビジョン系や青二プロダクション81プロデュースなど大手声優事務所が主流だったアイドル声優ブームに風穴をあけることになる。さらに、ハロープロジェクトアップフロント系から分裂したスタイルキューブが、小倉唯石原夏織能登有沙、松永真穂からなるアイドル声優ユニット「StylipS」で成功をおさめると、各事務所がアイドル声優ユニットを次々とプロデュースするようになる。

「2005年から2006年にかけて行った」という曖昧な書き方はWikipediaの引き写しでしょうね。ソニーの公式には単に2005年とあるのですが。それはさておき、StylipSの影響で次々と声優アイドルユニットが誕生したというのは完全に間違い。逆に、StylipSの方が、声優ブームの後追いで結成されたのです。初期メンバーの小倉唯は、その直前に、アニメ「ロウきゅーぶ!」から派生したユニットRO-KYU-BU!で注目されたのですし。

アイドル声優ユニットブーム真っ只中の現在。顕著になりはじめたのは、アイドル声優の低年齢化である。それまでは、専門学校や事務所の養成所を出た後、長い下積みを経て当たり役を手にし、アニメファンに認知されるようになった結果、アイドル化するという流れがほとんどだったが、新規事務所や芸能系事務所のオーディション戦略により、オーディション後、すぐにアニメの主役を手にするというパターンが増えてきた。その結果として、「第36回ホリプロタレントスカウトキャラバン 次世代声優アーティストオーディション」に合格し、そのままアイドル声優になった木戸衣吹など、現役女子高生アイドル声優も増えてきている。

まず、声優の低年齢化は今に始まったことではありません。90年代の時点で、アーツビジョン青二プロダクションといった業界大手が、養成所で育成中の新人を売り出したり、飯塚雅弓坂本真綾清水香里といった子役出身のタレントが、女子高生声優として注目を集めたりといったことは普通にありました。

あと、木戸衣吹スカウトキャラバンに「合格」していません。優勝したのは田所あずさですね。

長い下積みによる卓越した演技力よりも、若さあふれるフレッシュな演技やルックスなどが求められるようになってきた女性声優業界。一方で、現在も経験に裏打ちされた演技と長年にわたるファンとの交流により、水樹奈々田村ゆかり堀江由衣らがアイドル声優として活躍するなど、一度、スターダムに上がると、長期的な人気を博し続けるのも女性声優業界の大きな特徴である。

これも意味不明ですね。10代で声優デビューした水樹奈々はもちろん、アニメで大役を得る前から声優雑誌のグラビアを飾っていた堀江由衣や、声優としてほぼ無名な段階で「デビルマンレディー」の主題歌を歌っていた田村ゆかりは、「若さあふれるフレッシュな演技やルックスなどが求められるようになってきた」状況の先駆けとさえ言えるでしょう。

「一度、スターダムに上がると、長期的な人気を博し続ける」というのも楽天的にすぎます。一時期、人気を集めて、そのまま消えた人なんて、いくらでもいますよね(あえて名前は挙げませんが)

この文章が変なのは、まず「声優人気の変遷を整理してみた!」と言いつつ、時間の流れがめちゃくちゃな事。そして、声優人気がアニメ・ゲーム作品にあわせて生じるという点が無視されていることでしょう。そもそもアニメのタイトルが「タッチ」と「なのは」しか出てこないし。「芸能系事務所」を声優事務所と対立するように捉えているのも不適切だろう。